SOMEWHERE

2010年 アメリカ

監督/脚本 ソフィア・コッポラ
出演 スティーヴン・ドーフ
   エル・ファニング

第67回ヴェネチア国際映画祭にて金獅子賞を受賞した、ソフィア・コッポラ監督の最新作。

僕はソフィア・コッポラ監督が大好きである。
記事にも書いたが、特に『ロスト・イン・トランスレーション』は自分の映画リストの中でもかなり上位に来る。もちろんデビュー作の『ヴァージン・スーサイズ』も大好きだ。

だが、前作『マリーアントワネット』は正直いただけなかった。
映像ばかりキレイでガーリーになっていき、一体何がやりたいのか分からないまま終わってしまった。
そういうこともあり、今作にはとても期待していた。

設定が『ロスト・イン・トランスレーション』そっくりである。関係性と年齢の違いはあれど、男女2人の数日間の日常を描いている辺りはほぼ変わらない。
「原点回帰か?」と予想していた。

だが、実際観てみると、確かに『マリーアントワネット』よりかは良かったものの、またしても不完全燃焼だった。
『ロスト・イン・トランスレーション』が大好きな僕にとっては、大きなドラマがないことは初めから分かっていた事だし、それ自体には特に文句はない。
問題になるポイントは「シャレオツ」な事である。

ソフィア・コッポラはファッションデザイナーなんかもやっている監督で、ガリーでシャレオツでブルジョアな映像が話題に上がる事が多い。
確かに今作にも、そういった彼女らしいモチーフが沢山登場する。
清潔な真っ白いシーツにふかふかのベッド、キレイなプールに、ブロンドのガール…。
断片を観ただけでもソフィア・コッポラの映画だと分かる。

だが、僕は実はそういう事が彼女の映画の魅力ではないと思っている。
何度も出すが『ロスト・イン・トランスレーション』を例に挙げてみよう。

Lost_in_translation

→この画像を観ても分かるが、『ロスト・イン・トランスレーション』は日本というどこかソフィア流シャレオツ感とは違う場所を舞台にしている。
眼鏡や禿げたおじさんサラリーマンに囲まれる長身のアメリカ人。
実はこの映画の特徴はこういった対比にあると思う。
ネオンがごちゃごちゃとし車がバンバンと通る異国を走り回る、2人のアメリカ人。
ブロンドの美女スカーレット・ヨハンソンが醸し出すガーリーでシャレオツな空気を、どこかオヤジっぽいノリで茶化すビル・マーレー。
魅惑的な映像のバックにかかる、はっぴぃえんどの「風をあつめて」。
そういったソフィア流シャレオツ感と、それとは逆の俗っぽさが見事にマッチした作品だった。

では、『SOMEWHERE』に話を戻そう。
まず一番上の画像を見てもらいたい。どうだろう…。
2人ともイケメン、激カワだ。おまけに2人のいる場所は超一流ホテル。

つまりこの映画はシャレオツな場所で、シャレオツな事をするシャレオツな2人の話になっている。
おまけにバックにかかる音楽はフェニックスにストロークス。完璧である。
これほどまでに固めてしまえば、そりゃ映像は素晴らしくシャレオツになるに決まっている。
だが、映画的な面白み味が感じられないし、僕の様な庶民にとってはいつまでもどこか遠くの出来事でしかないのだ。Tシャツに値札が付いていて、裏返して着ちゃう様な“スキ”がないと、身近に感じる事が出来ない。
それが出来なければ、いくら主人公が電話で涙ながらに独白されてもココロに届かない。

『ロスト・イン・トランスレーション』はまるで自分の為に作られたんじゃないかと錯覚するような映画だった。

ソフィア・コッポラはもしかすると巷で言われている「ガーリー」だとか「ハイセンス」という言葉に踊らされてやしないだろうか。
意識しすぎて逆にその呪縛に縛られているような、そういう不自由さをこの映画から感じてしまった。

だが、まだまだ彼女の映画が好きだと言える。映画監督はバッターとおんなじ。
打率3割で名バッターなのだから。

ロスト・イン・トランスレーション [DVD] ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

販売元:東北新社
発売日:2004/12/03
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 

マリー・アントワネット (初回生産限定版) [DVD] マリー・アントワネット (初回生産限定版) [DVD]

販売元:東北新社

発売日:2007/07/19
Amazon.co.jpで詳細を確認する

 

ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOX ゴッドファーザー コッポラ・リストレーション DVD BOX

販売元:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン

発売日:2008/10/03
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (1)

キック・アス

Kick_ass27_3

2010年 アメリカ、イギリス

監督 マシュー・ヴォーン
出演 アーロン・ジョンソン
    クロエ・グレース・モレッツ
    ニコラス・ケイジ

公開当時、観損ねてしまったので、二番館で鑑賞。
自主映画にもかかわらず、好評を博し日本でも話題になった作品。
これほど話題に上がる要因として、やはり現代的な「オタク」の姿が描かれていることが挙げられると思う。
上の画像だけを観れば、間違いなくただのアメコミコスプレ集団である。
主人公の動機は純粋に正義を成す為なのだが、どう観てもオタク集団にしか見えない。

だが、これまでにもいわゆる「オタク文化」をモチーフにした作品はいくつかあった。
日本では『電車男』だとか、海外でも『バス男』などがそれにあたると思う。しかしこの『キック・アス』はそれらの作品と大きく違う要素が根っこに絡んでいる。
それがマクレイディ親子(ヒットガールとビッグダディ)のエピソードである。

この親子のエピソードは『電車男』などは速攻で逃げ出してしまうくらいハードボイルドでダークな復讐劇なのだ。
なんのことはない、この『子連れ狼』的で、さもすると時代遅れな復讐劇がこの映画の真のあらすじなのだ。主人公のオタク青年のコスプレヒーローごっこは、あくまでも観客の私たちの目を向けさせるきっかけに過ぎない。
もっと言えば主人公は、「売れない暗いバイオレンス映画」を「ヒットするポップなコメディ映画」にすりかえる種なのだと思う。

もちろん彼の成長していく様も描かれているし、そこに共感や感動を覚える人もいると思うが、監督がどこに情熱を注いでいるかは一目瞭然な気がする。
主人公を差し置いて、ヒットガールがこれほど人気を博すのは、演じるクロエ・グレース・モレッツが可愛いからという理由だけではない、ということだ。(もちろん可愛いけど)
それがこの映画の最も評価すべき点だと思うし、勉強になる点だった。

結果このマシュー・ヴォーン監督は、オタクの主人公青年を隠れ蓑にして、強烈なバイオレンス描写を思う存分撮りまくり、11歳の少女に卑猥なセリフを喋らせ、マクレイディ親子は悲願の復讐を果たした。それを観客は笑いながら観る、という構図が出来上がるのだ。

この監督、もともとプロデューサー畑の人。さすがに策士である。


キック・アス Blu-ray(特典DVD付2枚組) キック・アス Blu-ray(特典DVD付2枚組)

販売元:東宝
発売日:2011/03/18
Amazon.co.jpで詳細を確認する

キック・アス DVD キック・アス DVD

販売元:東宝
発売日:2011/03/18
Amazon.co.jpで詳細を確認する

Wacky Wobbler - Kick-Ass: Hit Girl Wacky Wobbler - Kick-Ass: Hit Girl

販売元:ファンコ
発売日:2011/01/22
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (1)

英国王のスピーチ

Photo

2010年 イギリス

監督 トム・フーパー
出演 コリン・ファース
    ジェフリー・ラッシュ
    ヘレナ・ボナム=カーター

今年の第83回アカデミー賞、作品賞ほか計4部門を受賞した作品。

「吃音症のイギリス国王が国民の前でスピーチをする為に、言語聴覚士の偏屈な男と共に悪戦苦闘し、立派な王になってゆく……しかも実話を基に」

一息でこの作品のあらすじを言えば、そういうことになるが、この時点でもうすでにかなり成功していると思う。
間違いなくこの映画は“企画”と“プロット”(あらすじ)の勝利だろう。

映画自体は非常に予定調和であると言っていいと思う。
特に客を裏切るような展開があるわけではなく、シンプルにストーリーが進む。
だが、退屈しない。
特に国王を演じるコリン・ファースと言語聴覚士のジェフリー・ラッシュの会話のシーンは、ずっと見ていられる。
特に特殊な演出やカメラワークでもない。せいぜい役者の向いている方向と反対側にわざと空間を空けているくらいで、他はなんの変哲もないカットバック。

そう、単純にこの二人の会話が面白いのだ。
それも三谷幸喜的な軽くてコメディ調のものとは違う。二人の人生観や過去、それらが垣間見える瞬間がさりげなく会話の端々にある。
それは言い換えれば、この二人のキャラクター造形が面白いということ。

みながひれ伏す国王と、一般人の役者崩れの言語聴覚士。
この設定が自然と面白い会話を生み出している。
脚本家が頭をひねり出して書いた、というよりは人物が自然と喋りだしたという感じに近いのではないかと思う。

ラストも定番中の定番。
だが、良くあるサクセスストーリーものに比べるとやや抑えた演出になっている。
奇跡が起こったみたいにすらすらと喋る、ということにはなっていない。なんとかなんとかつっかえずに言えた、という程度。
コテコテの映画ばかり観ている人にとっては若干物足りない可能性もあるが、僕にはちょうど良かった。
その「なんとかなんとか」感が、よりその二人の未来を暗示しているからだ。つまり映画はそこでは終わらない、というエンディングになっている。

この映画、よく考えれば、国王を天皇に替えれば日本を舞台にしても充分通用する。
だが、日本ではまず実現しないだろう。


英国王のスピーチ コレクターズ・エディション [Blu-ray]英国王のスピーチ コレクターズ・エディション [Blu-ray]

販売元:Happinet(SB)(D)
発売日:2011/09/02
Amazon.co.jpで詳細を確認する

マンマ・ミーア! 【VALUE PRICE 1800円】 [DVD] マンマ・ミーア! 【VALUE PRICE 1800円】 [DVD]

販売元:ジェネオン・ユニバーサル
発売日:2010/04/02
Amazon.co.jpで詳細を確認する

パイレーツ・オブ・カリビアン/ブルーレイ・トリロジー・セット (数量限定) [Blu-ray] パイレーツ・オブ・カリビアン/ブルーレイ・トリロジー・セット (数量限定) [Blu-ray]

販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
発売日:2011/04/20
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

Phrazes for the Young

Photo

2009年 Julian Casablancas (ジュリアン・カサブランカス)

ついにやっと先々週手に入れて、それ以来ずっとヘビーローテーションで聴いている。
Ths Strokes(ザ・ストロークス)のフロントマン、ジュリアンの満を持してのソロデビューアルバム!

ストロークスのシンプルなバンド音とは打って変わり、打ち込みを駆使した電子音中心の楽曲が揃っている。

このアルバムに関しては、
4曲目の「11th Dimension」と
6曲目の「Glass」
この2曲に尽きると、私は思う。

「11th Dimension」はこのアルバムのメイン曲。
リズミカルでポップなシンセサイザーが心地よくて、メロディーもすっと入ってくる。
近未来、レーザー光線が瞬く大都市を夜中に未来カーでドライブしているような感じ。。
あくまでノリと、構成という意味でいえば、このアルバム内で最もストロークスに近い雰囲気がある様な気がする。
英語はよくわかりませんが、この歌の歌詞(特に歌い出し)のワードの選択は天才的だと思う。
「I just nod~♪ I've never been so good at shaking hands~♪」なんて一発で覚えてしまう。

だが、このアルバムで最もヤバイ曲は「Glass」の方だと思っている。
最初聴いた時は、フラッと立ちくらみがする感じだった。この感動を文章で伝えるのはなかなか難しい…。
一言で言うと、「電子で原始」なのだ。

・宇宙
・オーロラ大爆発
・万華鏡
・遺伝子の螺旋

こういったイメージがサビになった瞬間に一気に音と共に流れ込んでくる感じだ。
生物の原始的な感覚と懐かしさが、電子的な音とジュリアンの声から感じられる。
うまく説明できないこの感覚に最初は戸惑ったが、今は素直に“感動”として受け止められる。この曲を生で聴いたら、おそらく泣くだろうなぁとすら思う。

ぜひ聴いてみて欲しい↓
http://www.youtube.com/watch?v=U5xrFvdnDhk

アルバム全体の感想としては、ジュリアンファンじゃないと少々きついかな、と思う部分もある。
ジュリアンの声はインパクトがあるだけに、ずっとこのノリで聴いているとボーっとしてくる。耳に入ってこなくなってしまうのだ。
そんな時私は「Glass」を聴いている。この曲にジュリアンのやりたかったことがつまっている気がするからだ。

来年にはストロークスの新作も出るかもしれないらしい。
このアルバムを通してジュリアンが獲得したものと、各メンバーが獲得したものが、どんな風にストロークスとして混ざり合うのか…。
非常に楽しみだ。

Phrazes for the Young Phrazes for the Young

アーティスト:Julian Casablancas
販売元:RCA
発売日:2009/11/06
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (2) | トラックバック (0)

沈まぬ太陽

Photo

2009年 日本

監督 若松節朗
脚本 西岡琢也
出演 渡辺謙
    三浦友和
    石坂浩二
    鈴木京香
撮影 長沼六男
音楽 住友紀人
原作 山崎豊子 『沈まぬ太陽』

『白い巨塔』『不毛地帯』などの骨太社会ドラマ小説を得意とする、山崎豊子さん原作を映像化。
大長編で映画の間には、休憩が入るほど。
この前映画館に行ったのだが、驚きの大行列。しかも年齢層が高いかたばかり…。
山崎豊子作品への根強いファンが多いことを認識した。

架空の航空会社、国民航空で働く恩地(渡辺謙)と行天(三浦友和)はかつて労働組合で労働条件向上の為の闘争に励んでいた。
恩地はその頃の活動のせいで、会社に煙たがられ、世界の僻地へ左遷されてしまう。
一方、行天は出世街道を突き進んでいく。
10年ほどの海外勤務を耐えた恩地が日本に戻った頃、国航ジャンボ墜落事故(日航機墜落事件が元)が起こる…。

期待していたより面白くなかったと言っていいと思う。
残念ながら、『白い巨塔』と同じことをやっているだけである。そして作品としては『白い巨塔』に劣ると思う。
私は『白い巨塔』は2003年のテレビドラマしか観ていないのだが、あの作品はよく出来ていると思う。

理想家で正義感の強い恩地と、出世思考の強い行天の構図は、そのまま『白い巨塔』での里見と財前に当てはまる。
だが、決定的に違う点が二つあると思う。

まず一つは主役。
この作品では恩地を主役として作られているが、『白い巨塔』では財前が主役である。
正論をかざして理想を突き進む恩地を主人公とするのは一見当たり前のように見えるが、はっきり言うと面白くない。
恩地の言う“理想”や“正義”というのは、誰の中にもあるものだからだ。
どんな辛い境遇になってもそれを突き通す強さ、家族を不幸にしてまで突き通すことかという葛藤、というのが恩地の持つパーソナリティーだとは思う。
だが一方でそのつくりは「愚痴映画」になってしまう部分もあるのだ。

「正義の恩地が社会に追いやられて可哀想…」
というステレオタイプで薄っぺらい映画になってしまっている部分がある。
それはこの社会を描く上では、非常に表層的な視点だと思う。

財前を主役に据えた『白い巨塔』とは違い、
「何が彼をそこまで掻き立てるのか」
「なぜ彼はそれほどまでに出世にこだわるのか」
という一歩進んだ議論を生んでくれない。
映画を観終わった後に考えることがない。誰が見ても恩地が正義であるように作られているからだ。

もう一つの違いについてもこのことにつながる。
出世思考の行天に理由がないのである。これがこの映画を決定的に薄くしている。
財前はどうだっただろうか…。彼はなぜあれほどまで出世にこだわったのか。
彼は自分の理想である癌センターを設立し、世界にも太刀打ちできる医療設備を作ることが目的だった。それがより多くの人を救う彼なりの正義だったのだ。
その考えを突き詰めていくことで、成り立っていたキャラクターだった。
そして、それは一方では正論なのかもしれないとさえ思えた。

では行天はどうだろう…。
少なくともこの映画を観ているだけでは、彼の理想や正義を感じることが出来なかった。
彼は出世して何をしたかったのだろうか。
それが見えないから、彼はただの悪の象徴に成り下がってしまっている。
そのせいで、恩地、行天の友情も感じられず、薄っぺらい作品に見えてしまった。

なにも『白い巨塔』と対比させる必要なんてないのかもしれない。。
だが、はっきり言って「対比してください」と言わんばかりの作りなのだ。
石坂浩二さんや品川徹さんなどは「またこれかよ~」と思うような役柄。ラストで『白い巨塔』で弁護士を演じた上川隆也さんが、検事役で登場したときはギャグかと思った。
なぜこれほど似通った作りにしてしまったのか。。
残念ながら作品のアラを目立たせるだけに終わってしまっている。

だが、私が観ていた時は上映終了後に拍手がチラッと起こっていた。
今まで映画館で拍手が起こっているのは初めて聞いた。当時を知っている人たちの拍手なのかもしれない。。
その方たちの心には大きな感動を残したのは事実だろう。

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫) 沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上) (新潮文庫)

著者:山崎 豊子
販売元:新潮社
Amazon.co.jpで詳細を確認する

沈まぬ太陽 Blu-ray(特典DVD付2枚組)沈まぬ太陽 Blu-ray(特典DVD付2枚組)

販売元:東宝
発売日:2010/05/28
Amazon.co.jpで詳細を確認する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

«ぐるりのこと。